はじめに
理由ははっきりしないけれど、
なんだかずっと心が苦しい。
人との関わりの中で、疲れやすかったり、
必要以上に我慢してしまったり。
「今の自分が弱いからだろうか」
「性格の問題なのかもしれない」
そんなふうに、自分を責めながら過ごしてきた方もいるかもしれません。
このコラムでは、「未消化の感情」という視点から、
今感じている生きづらさを丁寧に紐解いていきます。
感じきれなかった感情。
当時はそうするしかなかった選択。
とくに、親子関係の中で身につけてきた心の癖が、
大人になった今の人間関係や日常に、どのように影響しているのか。
そして最後に、
そうした未消化の感情と、
カウンセリングの中でどのように向き合っていけるのかについてもお伝えします。
「今の苦しさには理由がある」
「これまでの自分を責めなくていい」
このコラムが、そんなふうに感じるきっかけになれば幸いです。
第1章|未消化の感情とは何か
「特別な出来事があったわけじゃないのに、なんだか苦しい」
「ちゃんと生活できているはずなのに、心が重たい」
最近、こうしたご相談がとても増えています。
日常生活は回っている。
仕事も家事も育児もこなしている。
周囲から見れば、大きな問題はなさそうに見える。
それでも、
ふとした瞬間に胸が苦しくなったり、
人との関わりの中で理由の分からない疲れを感じたりする。
その背景にあることが多いのが、未消化の感情です。
未消化の感情とは
未消化の感情とは、
本当は感じたかったけれど、感じきることができなかった感情。
本当は表現したかったけれど、表現できなかった感情のことを指します。
怒り、悲しみ、寂しさ、悔しさ、怖さ。
私たちは生きていく中で、さまざまな感情を経験します。
けれど、とくに幼少期や、立場が弱かった時期には、
「感じないほうが安全」
「我慢したほうがうまくいく」
そうやって感情を心の奥にしまい込み、生き延びてきた人も少なくありません。
未消化の感情は、
サボってきた感情ではありません。
当時の自分が、必死に守った感情です。
なぜ今になって苦しくなるのか
未消化の感情は、人生が少し落ち着いた頃や、
安心できる環境に入った頃に、表に出てくることがよくあります。
それは、心が「もう感じても大丈夫」と判断したサインでもあります。
また、未消化の感情は、
他者との関係性の中で再燃しやすいという特徴があります。
相手の何気ない一言に強く傷つく。
必要以上に我慢してしまう。
拒否されたように感じて、不安が大きくなる。
こうした反応は、
今の出来事そのものというより、
過去に感じきれなかった感情が、
現在の出来事をきっかけに呼び起こされている場合があります。
自分を責めなくていい
「自分が弱いからこんなに苦しいのではないか」
そう感じる方も多いかもしれません。
けれど、未消化の感情が浮かび上がってくるのは、
心がちゃんと働いている証拠です。
感じなかったことにしてきた感情に、
「そろそろ向き合ってもいいよ」と、
心が知らせてくれているのです。
第2章|親子関係が、今の生きづらさに与える影響
今の人間関係が苦しいと感じている方のお話を丁寧に辿っていくと、
幼少期の親子関係に行き着くことが少なくありません。
ずっと我慢してきた人ほど、今が苦しくなる
ある方は、職場や友人関係、パートナーとの関係の中で、
「自分ばかりが我慢している」
「相手に合わせ続けて、心がすり減っていく」
そんな苦しさを抱えていました。
けれど、今関わっている相手が特別ひどいわけではない。
むしろ、周囲から見れば恵まれている環境でした。
それでも苦しい。
お話を伺っていく中で浮かび上がってきたのは、
幼少期から続いてきた、我慢の生き方でした。
親の期待に応えようとする。
空気を読んで、自分の気持ちは後回しにする。
その生き方は、当時のその方にとって、
必要で、賢い選択でした。
けれど大人になった今も同じやり方を続けていると、
人間関係の中で無意識に自分を犠牲にし、
心が限界を迎えてしまうことがあります。
親子関係は、最初の人間関係
親子関係は、人生で最初の人間関係です。
そこで身につけた感情の扱い方や距離感は、
その後の対人関係の無意識の土台になります。
今の人間関係で繰り返しているパターンは、
過去の適応の延長であることがとても多いのです。
親を責める必要はありません
ここで大切なのは、親を責めることが目的ではないという点です。
親もまた、自分の親子関係の中で未消化の感情を抱え、
精一杯のやり方で子育てをしてきた可能性があります。
理解することと、許すことは別です。
無理に許す必要も、納得する必要もありません。
ただ、自分がどのように生き延びてきたのかを理解することが、
これからの生き方を楽にしてくれます。
第3章|カウンセリングでできること
未消化の感情に気づいたとき、
多くの方がこう感じます。
「頭では分かったけれど、どうしたら楽になるのだろう」
知るだけでは癒えない理由
未消化の感情は、
考え直すだけでは癒えていきません。
それは、理解されなかった感情、
感じきれなかった感情だからです。
必要なのは、
安全な関係性の中で、
その感情に触れ直すことです。
カウンセリングで大切にしていること
カウンセリングでは、
安心できる関係の中で、
無理のないペースで、
感情を否定せずに向き合っていきます。
過去の出来事を無理に思い出す必要はありません。
今感じている苦しさから始めて大丈夫です。
話す中で少しずつ、
なぜこんなに苦しかったのか、
自分は何を守ろうとしてきたのかが見えてくることがあります。
起きてくる変化
未消化の感情が整理されていくと、
人との距離感が楽になったり、
感情に振り回されにくくなったりします。
これは、性格が変わるというより、
本来の自分に戻っていく感覚に近いかもしれません。
おわりに
今の苦しさには、理由があります。
それは弱さではなく、
これまで一人で抱え、頑張って生きてきた証です。
けれど、これからも一人で抱え続ける必要はありません。
もし、少し話してみたいと感じたときには、
いつでもお手伝いさせてください。
あなたが、
あなたらしく安心して人と関われる日常を取り戻せるように。
